求道blog

村上春樹『アンダーグラウンド』

Posted in 日本文学一般 by UBSGW on 2007年3月5日

読む順序が逆になってしまったが、『約束された場所で』に続けて『アンダーグラウンド』を読む。アンダーグラウンド2とされる前者が地下鉄サリン事件の加害者であるオウム教団の信者たちのインタビューだったのに対して、こちらは被害者の方々へのインタビューである。地下鉄サリン事件からちょうど2年後である1997年3月20日に刊行された700ページを超える大著だが、思わず惹き込まれてあっというまに読んだ。読まされた。

思うところはいろいろとあったが、もっとも強く感じたことを一つだけ挙げるとすれば、例のない惨劇に直面した被害者の方々のほとんど全員が例のない異常事態をその時は決して”異常なもの”としては感じていなかったということだった。大勢の人びとが行き交うラッシュ時の地下鉄構内に致死性のガスを同時多発的にばら撒くという蛮行が人びとの想像の埒外にあったことは当り前のことだろう。そしてインタヴューはその当り前のことを淡々と裏付けていく。

「教祖」アサハラの死刑は確定したもののいまだに逃亡を続けている者もいるらしい。彼らは何を思って逃亡を続けているだろうか。願わくばこの本の中で被害者の中のお一人の言葉として紹介されている次の言葉の通りであって欲しい。

殴られた人(マジュンノム)は体を伸ばして寝ます。殴った人(テルンノム)は体を縮めて寝ます。

蛇足ではあるが鹿児島の選挙違反冤罪事件に関する新聞記事の中に次のような記述があった。

 経営者の男性は中山さんの知人だった。思わず怒鳴った。「うちは出していない。あんたたちは何のために警官になったんだ! 正義の味方になるつもりじゃなかったのか!」
 捜査員の一人が言った。
 「我々は真実を探している。偏った捜査はしていない。信じてほしい」
 30分の口論の末、2人は帰っていった。
 ところが、午後5時半ごろ、2人の捜査員はもう一度やってきた。「今の気持ちはこれです」と言って、額に入った二つの書を差し出した。
 「事件が解決したら、中山さんに渡してほしい。こういう刑事もいたということを伝えて下さい」
 書にはこう書かれていた。「うそはうその友を呼び 真実は真実の友を呼ぶ!」

「止まらなかった『暴走列車』 下」(asahi.com My Town 鹿児島)

「うそはうその友を呼び 真実は真実の友を呼ぶ!」
青臭いこといってるんじゃないよという向きもあるかもしれないが、なんとか基本法の改正とかなんとかいうよりもさきに、まずなによりも上の言葉が決して空々しく響かない人と人との繋がり、信頼関係がつくづく欲しいと思った次第。

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