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yakuza国家ニッポン?

Posted in 政治 by UBSGW on 2007年4月25日

この本(カプラン・テュブロ著『ヤクザが消滅しない理由。』)の初版の日本語訳『ヤクザ~ニッポン的犯罪地下帝国と右翼』が第三書館から刊行されたのは1991年(原著の刊行は1986年)。初版刊行の後15年を経てさらに三つの章を追加した新版として2003年に刊行された。初版は未読だが、新版つまり『ヤクザが消滅しない理由。』ではヤクザの経済的影響、海外進出について大幅に加筆されている由(原題は”Japnan’s Criminal Underworld”)。初版の日本語訳は著者らの望みにもかかわらず日本の大手出版社が二の足を踏んだために、原著刊行から5年後にようやく第三書館というマイナー出版社からの刊行となったとのこと。

ヤクザの歴史的生い立ちからときはじめた本書は、現代の日本社会にどれほどヤクザ勢力が浸透しているのかをあきらかにしていく。極右勢力とヤクザの結びつき、右翼思想とカネと選挙を媒介としたヤクザと政界のズブズブの関係、社会に浸透したヤクザ勢力・・・。

取り上げられている著名人は数多い。政治家なら岸信介、大野伴睦、田中角栄、竹下登ほか。政界のフィクサーと目された笹川良一、児玉誉士夫ら。

そういわれてみれば戦後の日本、私の知る限りでも政界とヤクザの結びつきを示す傍証は枚挙に暇のないほどではあった。しかしその時々で通り雨の如き報道がなされはしたものの、その後も政治家たちが反社会的勢力と絶縁したようには見えない。そしてわたし自身がそうした生臭い話にはさほど関心を持たなかったことも告白せねばなるまい。

バブル崩壊後の数百兆円に及ぶ莫大な公共投資にもかかわらず一向に回復の兆しを見せない不況にあえぐ日本人は、威勢の良い小泉という男に希望を託した。危なっかしさを感じつつも「とりあえず」彼に望みを繋いだ。一見勇ましげな言動や強引な靖国参拝は彼を一流のリーダーだと人びとに思わせるだけのインパクトをもっていたとは私も思う。しかしやはり危ないものは危ない。小泉政治の危うさに人びとは眼を瞑って郵政解散直後の選挙でも彼に信任を与え、その後は危なっかしさばかりが露わになり始めた。

その頃、小泉のあとを誰が襲うかがその後の日本の行く末をかなりの確度で占うだろうということをおそらく多くの日本人は感じていたと思う。そして結果は小泉路線の踏襲、否、小泉以上に危なげな道を日本人は選択したのだった。

しかしたとえば北朝鮮の核、好戦的な中国といったような東アジアの事案が統制の効かない状態に万一なってしまうとか、あるいは世界経済が恐慌におちいってしまうなどしたら、こうした団体が不安定な状況を作り出すのに効果的役割を演じることは十分あり得る

『ヤクザ~ニッポン的犯罪地下帝国と右翼』
現首相(安倍晋三)は、一部歴史家が「悪辣な右翼」と呼びならわす岸信介の孫とはいえ、岸の悪行にも善行にもなんらの責も負う者ではない。たとえ岸が植民地満州で麻薬取引の元締として暗躍し、かつ右翼やアウトローたちと結託して勢力を築き上げ、満州で培った財力と人脈によって戦後日本の枢要な地位を占めたのだとしても、それについて現首相はまったく無関係である(岸については原 彬久著『岸信介―権勢の政治家』岩波新書1995年に詳しい)。当人の責によらずして(祖父の功罪をもって)彼を弾劾することも賞賛することもできないし、また為すべきではないだろう。彼は彼自身の言動についてのみ権利を行使しかつ責任を負わねばならないだけだ。もっとも、もし彼が祖父とそっくりな人間であったとしても驚くには足らないのかもしれないが。

話が本から逸れた。
この一書はヤクザを主題としつつもその視線は日本社会そのものを捉えようとしている。談合・示談・汚職・選挙。

ヤクザは世界のどのギャングよりも、犯罪組織として受け入れられているだけでない。ヤクザの役割がもっと公然と制度化されているのである。ほかの社会であれば弁護士や裁判所関係者にゆだねられているさまざまな仕事を、ヤクザはおこなう。もめごとの示談の場合などは特にそうである。(中略)ほとんどの日本人は暴力団との接触を避けるため最善を尽くすが、どうしても避けられない場合も多い。

同上
反社会的勢力には毅然とした対応を取るべし、とは巷間当り前のように言われている。しかし、実際にその現場に立ち至ったときにそれを実行することはときとして大きな困難を伴う。場合によっては味方であるはずの者からまで後ろから一刺しにされることにもなりかねない。その程度には彼らも狡猾なのなのだから。ましてや万人の闘争状態であるかのような社会情勢にある現代日本、残念ながらアウトローの活躍の場はそこかしこにつくられてゆきつつある。意図せずして一般民衆が彼らアウトローの悪行の後押しをしているというわけだ。

政治的選択にしろヤクザ活動の温床づくりにせよ、それがもし意図せぬものであったとしてもその結果は我々自身が負担することになる。

日本の政財官界あらゆる場所にはびこるヤクザ勢力。肥溜めの中で生まれた人間は、汚物にまみれて生活することこそ人間的な生活なのだと思うほかはない。外の世界を知らないわけだから。ひょっとして日本人は肥溜めの中で生活しているのだろうか。肥溜めの中で内輪もめし続ける阿呆どもか?そうなのかもしれない。

この本の中で元警察庁長官江口俊男の言葉が紹介されている。元ネタは1964年の毎日新聞連載記事なのだそうだ。

社会から暴力を根絶するため、われわれは暗黒街に政治的配慮を加えてはならないのである。四方八方から情け容赦なく叩きつぶすべきなのである

同上(孫引き)
警察のトップの言葉としては当然すぎるとも思われる。なにをいまさら、と。しかしどうも実態がそうではないからこそこのような言葉が出て来たのだとも言えるだろう。暴力的集団に「政治的配慮を加え」「四方八方から彼らを後押しする」のが現実の姿であるからこそこの警察官僚は(まっとうにも)このような言葉を吐かざるを得なかったのかもしれない。

一般市民の微罪をあげつらう暇があるのなら、ありもしない犯罪を作り出すだけの力があるのなら、まずは市長を殺し市街地で玩具を振り回す悪党を片付けてくれ。
それとも君自身がその黒幕なのか?ひょっとして君も悪党どもの手先なのか?
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いやいや、面白い本だった。
P.S. ハルバースタムの不慮の死を悼む。


(追記)
「首相、週刊朝日記事に激怒」(産経新聞)[キャッシュ

「週刊朝日」(5月4日・11日号)が、長崎市長銃撃事件の発生に首相秘書のトラブルが関係していたと受け取れる記事を掲載したことについて

(追記の追記)
「週刊朝日報道を安倍首相が批判」(朝日新聞)

山口一臣・週刊朝日編集長の話 一部広告の見出しに安倍首相が射殺犯と関係があるかのような不適切な表現がありました。おわびいたします。

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