求道blog

Leeくん、君はいま何を思うか

Posted in 雑記 by UBSGW on 2007年4月29日

バージニアの銃乱射事件に関して先日私は書いた。「どれほどグロテスクであろうと残虐であろうと非道徳的であろうと、それが物語にとどまるのならば誰からも非難されるいわれはない」と

シカゴトリビューンによると高校生Leeくんが授業の課題として書いたものの中身があまりにも暴力的であるとして逮捕されたのという(おまけに彼は中国系)。少しだけ驚き、同時に「やはり」とも思った次第。

  • ”Student writes essay, arrested by police”(4/26付)
  • ”Student’s writing brings disorderly conduct charge”(4/27付)

  いずれもChicago Tribune(電子版)

酒・ドラッグ・セックス・屍姦等々。確かに穏やかとは言えない。しかしだ。彼は createve-writing の授業で "Write whatever comes to your mind. Do not judge or censor what you are writing." という指示に忠実に従ってそれを書いたわけだ。にもかかわらずエッセイを読んだ教師は本人・保護者の頭越しに警察に通報して、当人は後日登校途中に逮捕されたそうだ。当人は「いったいどういうわけなんだよぉ・・」というところだろう。彼のことを「馬鹿正直」と言うべきなのか?

(バージニア工科大学で起こった)大事件の直後というタイミングの問題か?彼はTPOをわきまえなかったとして責められるべきなのだろうか。

学校側としては「なんか問題起こったら責任問題だぁ」という危機感があったのだろう。そうでなければ通報する以前にやれることはいくらかあったはずだろうに。ひょっとして当人に真意を確かめるなどということは怖ろしくて出来ないほど彼は日頃から怪しげな言動をとっていたのか?。どうもちがうらしい。成績は優秀、問題行動歴もなかった(卒業後は海兵隊入隊を志望しているのだそうだ)。にもかかわらず指示通りに書いた作文が暴力的だとして突然逮捕。

もちろんバージニアの事件の衝撃はそれほど強烈だったといえるのだろう。しかしこの逮捕劇は異常と言うしかない。

わかる。もちろんわかる。危機管理だかなんだかしらないが「とりあえず処置」したくなるのは分かる。転ばぬ先の杖は大切かもしれない。が、彼の(空気を読めない?)行為よりもよほどそちらの方が異常な事態であることは認識しておくべきだろう。

昨今の”なりきり道徳家”連中は「(いまどきのわけえもんは)ゲームのやり過ぎで現実感覚が希薄だ」などと知った風なことをしばしば仰る。わたし自身、漠然と「ま、そうなのかね」などと思ったりもしたのだが、最近はどうも違うような気がしてきた。というか、むしろいい年をした(しかも社会的地位の高い)連中の方がよほど現実感覚が乏しいように見え始めている。現実と理想、現実と願望なんてものがゴッチャをごっちゃにして「理想が理想としての機能を果たしてないんだからもっと”現実的な”理想に改変しようよ」とかその他もろもろ。自分が見たいものだけを見てそれがすべて。自分が見たくないものはすべてハナから存在しないもの、ケシカランもの、タワ言、言い訳、内政干渉・・・。彼らは現実と虚構の別がわからない。

ちょうど今、『アメリカの反知性主義』という本をボツボツ読んでいるが、(ちょっと脈絡が違うけど)今、再び反知性主義という恐竜がアメリカでも、そして日本でも大暴れしている。名の知れた大学を出てついでに南カリフォルニアあたりの大学に遊学して(ロンドンでも可)一見とても知性があるように見える方たち(ここは、ま、行きがかり上)であってもその実知性など大嫌い。だから ○ ○ 面のブッシュ君ととっても話が合う。「ヘイ、ジョージ」「兵、心臓」。BGMはプレスリー?

「Leeくん、TPO弁えないとダメだよ」。・・・・・・うん、それは確かにそうだ。が、しかしそれは同時に非常に危険でもある。

    「この非常時に文学なぞにうつつを抜かす非国民輩がァ!!!!」
    「みんながショックを受けてるときにそんなこと書いちゃダメだよ」
    「挙国一致で聖戦貫徹を目指しているのにおまえのそのだらしなさはなんだぁぁ!!!!!」
    等等

ま、もちろん常識さえあればそんな極端なことにならぬはずだ。そうだろ、おい。

なにごともホドホド、中庸が一番。

しかし、今の日本ではそのようなバランス感覚を最も必要としている(求められる)人たちが率先して竹ヤリ振りかざそうとしているんだな・・・。

村上さん、書けるうちにたくさん書いてくださいね。

そんな心配せずとも世界的文学者だから特別許可されるかな。

ともあれLeeくん、めげずに海兵隊でガンバレ!

とか書きながらも私は現地の雰囲気知らないからね

単なる外野のヤジにすぎないか・・・どうだろ。

ついでながらこの本を読みながら強く思うのは「アメリカの歴史って盲点だよなぁ」。
高校世界史のアメリカなんてピルグリム=ファーザーズがワシントン大統領になって南北戦争、米西戦争、モンロー主義であと現代史。「かけがえのない同盟国」のことをほとんどなにも知らない。戦争関係以外は。よし、今度の指導要領改定の目玉にしますか?安倍さん。
いや。じつは知らない方がシアワセなのかも。誰にとってのシアワセかは・・・・以下沈黙。

(2007/04/30追記)
続報:Marine Corps drops student after violent essay draws charges(Chicago Tribune,4/27)

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コメント / トラックバック4件

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  1. katsu said, on 2007年4月30日 at 17:07

    サドなんぞは、みな逮捕を覚悟して秘密の隠れ家で読まないといけなくなるようですね。なにやら「華氏451度」の世界のような。

  2. Dr. Waterman said, on 2007年5月1日 at 12:41

    流石にアンテナがよく張っていますね。こちらでもドライヴしているとラジオで流れていましたから、わたしもCTを読みました。わたしの近辺の者たちは、皆一様にLee君の原文を読んでみたいと言っています。

    しかし、何か怖かったのでしょうが、あの女の先生のような対応は極めて稀でしょう。普通の先生なら、本人に真意をただし、その上で異常が発見されたら、まず校長や父母に連絡するのが普通であり、それらを飛び越えて警察に通報することはありません。

    ところで、ここで女の先生が検閲云々を約束したことは本質的な問題ではありません。そもそもエッセイ教育の基本として、使用してはならない粗野な言葉や社会的に危険な表現については十分な説明があったはずですから、もしそのような内容のエッセイなら、この基本をはずしたLee君には censorship-free の適用はできないことになります。

    だから、われわれの興味は今、彼の essay の全文を見てみたいということになるのですが、警察や彼女の手許にあるのであってしばらくは公開されないのでしょうね。極めて稀なケースでマスコミが取り上げたということで、一般化できる問題点は少ないように思いました。それにしてもLee君はもう少し…。

    MWW

  3. Dr. Waterman said, on 2007年5月2日 at 16:13

    ふと Hofstadter の『アメリカの反知性主義』に気づき、グーグルしてみたら2004年頃に内田先生がブロッグに書いているのですね。見つけました。また、中国でなく、街場のアメリカもあることを。

    すでにお話したとおり、日本語ブロッグの世界に行き、のめり込むようになったのは昨年秋からのことで、昔のことはわかりません。3年前の内田先生の内容を見て、あぁそうかと思うことがありました。

    今では古い本ですが、Hofstadter の見方は一理あるし内田先生の要約もいいのですが、反知性主義と訳された anti-intellectualism というのは、元々は教会史の中ではアメリカのことではありません。2、3世紀頃より既に anti-intellectualism という動きとそれに対抗する動きが教会にありました。

    我々にとってはそちらの古代史のことのほうが有名なのですが、歴史学者である Hofstadter はその古代史からヒントを得た気がします。古代のそれは何かというと、ギリシアやローマの古典や哲学の勉強が信仰の役に立つかどうかと論争のことです。

    中世までこの論争(戦い)は続きます。東方教会では古典学に比較的鷹揚でしたが、西方教会(ローマ)では古典学大嫌いというのがいたのです。しかし、結局のところ大勢は古典学も必要という学者派のものとなりました。例えば、ウェリギリウスなどの完全な古写本は、なんとヴァティカンの書庫が守り通したことはご存知でしょう。

    2004年当時、内田先生を読んでいたら、わたしは何かコメントしたような気がします。また、日本のホーリネス教団と戦争のことも書いてありましたが、戦時下政府の宗教合同に最後まで反対して投獄されたのは、ホーリネスの牧師たち(確か95名)以外いないはずで、そのあたりの異議も出なかったようですね。他の教団の牧師たちは一様に戦争に賛同し、戦後に懺悔したわけです。

    今日の午後からわたしのEメールが変わりました。MWW

  4. UBSGW said, on 2007年5月2日 at 23:19

    >katuさん
    ブラッドベリ『華氏451度』は未読ですがいずれ是非読んでみたいと思っております。
    >秘密の隠れ家で読まないといけなくなる
    というのもそれはそれで読書の楽しみが倍加しそうな気もしないではありませんね(苦笑)


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