求道blog

異端の言説

Posted in 書籍一般 by UBSGW on 2007年5月24日

小島直記『異端の言説・石橋湛山』を読む。

戦前、東洋経済新報で健筆を振るったジャーナリスト石橋湛山の評伝。次第に色濃くなる軍国主義的風潮に抗して自由主義的言説を貫きとおした反骨人。戦後、短期間ながら首相を務めるも病に倒れて早々に勇退。ちなみにその跡を襲ったのは”ウヨキスト”(コレ勝手な造語です)であった。

著者である小島の言葉と湛山の言葉が錯綜している本なので引用は控えますが、「おお、まさに・・・」の連続でありました。せっかくなので一つだけ(舌の根が乾きがちなもので)。「中正を欠く思想界、之れ言論自由圧迫の結果」(東洋経済新報1933年9月9日号社説)をひきながら書かれた小島の一文。

わが国には、社会精神としての思想に対する寛容がない。自説とちがえば異端邪説として排斥するばかりでなく、その背後には金銭その他の不純の力が潜在するかの風説を立てる。はなはだしきは売国奴の汚名をきせ、暴力を用いてまでその主張を圧迫しようとするものさえ現れる。しかも社会はこういうものをあえて強くとがめようともしない。社会全体が、言論の自由、思想の寛容の大切なことを知らない。その結果、思慮あるものは、沈黙を余儀なくさせられる。批評は跡を絶ち、残るは或る党派の勝手次第の主張だけだ。 

どこまでが小島の言葉でどこまでが湛山の言葉なのか判然としませんがそれはそれとして、ここに書かれていることは誰の言葉なのかなどと言うことを超えた重い意味を持っていると感じます。

最近は何を読んでも現代の世相とダブって見えてしまう。というよりダブりそうな書物を選んでいるだけなのかもしれないが(意識的ではないのだが気がつけばそうなってしまってますね)。

自由主義者であり戦時中に政府から圧迫を受けた人間であるにもかかわらず、どういうわけか戦後公職追放の対象となった湛山(この本によるとGHQや吉田茂の意向らしい)。ちょうど公職追放について知りたかったことが書いてあったので以下メモ。

公職追放に関するメモ

公職
国会の議員、官庁の職員、地方公共団体の職員および議会の議員ならびに特定の会社、協会、報道機関その他の特定の職員の職をいう

(追放対象基準7項目)

A
戦争犯罪人
B
職業陸海軍職員(陸海軍省の特別警察職員および官吏)
C
極端な国家主義的団体、暴力主義的団体または秘密愛国団体の有力分子
D
大政翼賛会、翼賛政治会および大日本政治会の活動における有力分子
E
日本の膨脹に関係した金融機関および開発機関の職員
F
占領地の行政長官等
G
その他の軍国主義者および極端な国家主義者

(P536)
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いまbk1で見てみたら、新刊として『気概の人石橋湛山』(「異端の言説石橋湛山 上・下」の改題合本)が入手できるとのことでしたので紹介だけ。

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コメント / トラックバック1件

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  1. 遠方からの手紙 said, on 2007年5月28日 at 19:17

    過激派的外傷あるいは義人とその受難

     高橋源一郎に『ジョンレノン対火星人』という小説(?)がある。これは、もともとデビュー作の『さようなら、ギャングたち』より先に書かれたそうで、実質的な意味で彼の処女作ということになるのだろう。 処女作にはその作家の全てがあらわれている、というようなことが…


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