求道blog

シキの言葉

Posted in 雑記 by UBSGW on 2007年5月31日

今、森銑三の『明治人物夜話』を読んでいる。読みながらフト思ったことを少しだけ書いておくことにする。大した話でもないが、つね日頃感じることの多かった或ることについて他人の言葉に仮託して吐き出しておこうかな、と。

この本の中の「わが読書の記」で寒川鼠骨の『随攷子規居士』が取り上げられている。もちろん(?)わたし自身は未見の本だが、鼠骨が正岡子規から与えられた言葉が目を惹いた。
若き鼠骨翁が三つの新聞社の口に会して迷っていた際に子規は言下に、一番月給のすくない新聞社に行けと命じたのだそうである。そのわけは「人間は最も少い報酬で、最もおおくはたらくほどエライ人ぞな」ということであったと。
森曰く、

読んでその条に到つた時、私もまた病床の子規から、親しくその言を聴くの思がした。少しでも少くはたらいて、少しでも多くの報酬を得ようとする。そして幾ら貰つても満足しないで、不平不満を抱き続けて、結局不愉快な一生を終つてしまふ。それはあまりに情けないことではあるまいか。俳句和歌の革新者としてよりも、かやうな言葉を以て鼠骨翁に諭した子規に、私は一層頭が下る。

給料僅少労働過多。
骨折損之草臥儲
報酬乏少疲労困憊

なにをわざわざ安月給を選ぶ必要あるのかい?
貰えるものなら弊履でももらっとけ?
濡れ手の政治家、高級官僚?

小学校の道徳教室でならば「子規ってエライ人ですね~、みなさん」とでも教えるだろうかも。しかし、そう教えられた小学生が長じたのち「ぼく、おかねなんて興味ないんです、ほんとに」などと言いつづけてたら周囲の人は「コイツ、馬鹿?変人?嘘つき?」。

おまえはどうかって?
おかねたくさんほしいです、もらえるものならば。
です。
おかね持ってて困ることないし。新しいキーボード買えるし。旅行行けるし。本買えるし。
正直なとこ、金は欲しい(そこそこでいいけど)。なにもヒルズに一室欲しいとは言わぬし自家用ジェットでも一つ、などとは言わないが。
(一番買いたいのは「時間」。睡眠時間分くらいをオプションとして買えるものなら是非買いたい)

このままだと脱線しそうなのでもとへ。
金は欲しいね。(またかい!)
いや、たしかに欲しいものは欲しいんだけど、じゃ逆にもらえるもの(カネ)もらえないんなら働かないのかと問われたらこれは言下に「働くよ」と。
ここらへんを別の言葉で言いかえると

労働→高報酬→意欲UP→もっと労働
これ普通。
となると
労働→低報酬→意欲DOWN→クビ・退職・無気力
となるのか?

いや、それは微妙に違うでしょ、と。
で、これについては多くの方にご賛同いただけるのではないかと思いますが。

しかしこれが次のようになるとどうでしょう。
たとえば公務員の給料が相対的に高すぎるという批判に対して「そんなことはない」「安月給では良い人材が集まらない」とはよく耳にすること。
確かに給料が高い方が人は集めやすいだろうとは思う。給料が高ければ高いほど猫も杓子も集まるだろう。ピンもキリも蝟集するだろう。その質はともかく。
いや、なにも公務員の給料を引き下げよという話ではないのです。
ようは、給料が高い方が人材が集めやすいのは首肯するにしても、その逆に給料が安ければ良い人材が集まらないちうのはちょっとどんなもんだろうかな、ということなのですよ。公務員に限った話でなく。

いま、現に高給取ってるひとがみな、高給に惹かれてその職についたかといえばけっしてそんなわけではなかろう。金銭以外のたとえば意欲、使命感、興味、適性その他もろもろに従ってその職に就き、結果として高禄をはむに到ったという人も少なからずいるはずである。

にもかかわらず、なにかといえば「安月給では良い人材が集まらぬ」というのはちとおかしくないかい?
ま、そんなもんは次回から言い回しを変えてしまえばそれまでのはなしになっちゃうんだが。しかしどうもそういう言葉が違和感無しに通用してしまう社会そのものにこびりついているものに目がいってしまうのですよ。

もらえるものならいくらでももらっとくけど、かといってもらえないからってさぼるつもりも手ぇ抜く気もないってのが大方の心情ではなかろうか。「安月給では”良い”人材が集まらん」と仰る方はおそらくもらえなければさぼるし、手も鉄筋も抜いちゃうんだろうか。で、やけに働く人が近くにいるともう「カネの亡者」にでも見えちゃうのか。

世の中、ゼニカネだけじゃないってこと、あるでしょ?

しかしながらどうも世は高給取り=出来る人、ワーキングプア=能力ない人って感じになってるようないないような。
それはそれ、これはこれではないのだろうか。

「で、だからなんなのだ?」ですと??

いや、ソレはソレ、コレはコレですよ(汗)。
おそまつ。

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コメント / トラックバック1件

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  1. katsu said, on 2007年6月1日 at 11:56

    高い給料やよい待遇のような甘い蜜に引き寄せられてくるような者に、ろくな連中はいないということは言えるでしょうね。
    ただし、権力の魔力に引き付けられたり、独りよがりの妙な志を持った人間ばかりが公務員(とくに警察とか司法関係とか)に集まってきても困り者ですが。
    こんな安い仕事やってらんねえよ、とか言いながら、いざやりだすと、やっぱりきちんとやらなければ気がすまないものです。労働者の悲しい性とでもいいましょうか。


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