求道blog

『神谷美恵子 聖なる声』

Posted in 書籍一般 by UBSGW on 2007年6月8日

精神科医神谷(前田)美恵子の評伝。

ずいぶん前のことだが、美智子妃と縁のある方だということを耳にしたことがあった。そのせいで野人にはあまり縁がなさそうに思われた本ではあったが、何気なく手に取ってみたところ大層面白く、あっという間に読了。

「皇室とのご縁」などと聞いただけでもうなんだか、良い家柄に生まれたお嬢さんがすんなりお医者様になってすんなりハンセン病に携わり、すんなりご結婚なさってすんなり業績を上げられすんなり皇室に出入りなさったのであろうよ、などと思った私はこの女性を見誤っていたようだ。
この本を読んだ限りでは神谷美恵子という人は挫折に次ぐ挫折をも経験した人であったようだ。

父は内務官僚から後藤新平の引きで東京市助役に転じ、新渡戸稲造との縁で国際労働機関日本代表に就任、ニューヨーク日本文化会館館長を経て戦後は文部相にもなった前田多聞。幼少の頃よりスイス・日本・アメリカに学び英仏語のみならず古典語にも秀で、バッハを愛し文学にも造詣の深かった才媛。
と、彼女の閲歴を書いてみる。

まるで曲折がない。

しかしその実、曲折だらけの人生。
婚約者との死別、結核罹患、回復後、迷いを抱え込んだままのアメリカ留学、ハンセン病との出会いと周囲の反対、二十代半ばからの医学修行、日米開戦を目前に帰国、秀でた語学能力が災いして雑務に追われる生活、三十路すぎての結婚・育児。創作意欲を発散できぬ現実生活。四十を過ぎてようやく年来の宿願であるハンセン病への取り組みを開始するも育児や食い扶持稼ぎに追われる。

淑やかな表情のまま自らのデーモンを馴致し、不屈の意志で自らの人生を切り開いた女傑がここにもいた。
温容の女丈夫なり。

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