求道blog

年金記録照合が1年でやれるのか?

Posted in 政治 by UBSGW on 2007年6月11日

年金問題で世情は騒然としている。
団塊世代の受給開始を目前に、隠居部屋を増築しようと床下を見てみたらシロアリに屋台骨がボロボロで建物そのものが崩壊の危機に瀕していることが判明した、というところか。

ただでさえ少子高齢化を原因とする構造的問題を抱えている年金制度が、「ありうべからざる怠慢」によってもまた空洞化していたことが世人の怒りを招いている。当然だろう。
一時期、年金問題を参院選の争点にしないと突っ張っていた政府・与党の思惑などあっという間に吹き飛ばされた。これもまた当然だろう。現時点でも数千万件に上る未名寄せデータの存在が判明しているとのこと。週刊誌あたりではさらなる「宙に浮いた」データが存在していると報じている。この機会に、(当然の)世論に圧倒された政府与党が示している対策にいささか不審の念を禁じ得ない部分があるのでここに書いておく。

  1. 古くて書証がない納付データの確定を第三者機関に委ねる。
  2. 1年以内に名寄せを終了させる。

まず1に関していえば、「あてになるのかね?」
教育問題、集団的自衛権問題、憲法改正問題、耐震強度偽装問題等々のように、第三者機関・有識者会議とやらが如何にも胡散臭くてあてにならないものだと思わせる事実には事欠かぬ「もう払ったはずだ」という庶民の主張をそのまま呑んでくれる「第三者」機関になるなどと楽観は出来なさそうに思われる。悲観的に見れば第三者ゆえ庶民の正当な主張を情け容赦なくゴミ箱にポイ出来る機関でもあるのだ。

2についてこんな新聞記事を目にした。

該当者不明記録の氏名などにある程度のミスがあっても、該当する可能性がある対象者を検索できる新しいソフトウエアを導入する方針(・・・)政府はこのソフトの活用により、「1年以内に全件の調査を完了させる」との方針を実現させたい考え(・・・)政府が行う調査は、年金の加入者(約7000万人)と受給者(約3000万人)の計約1億人分の「氏名」「生年月日」「性別」の3条件と、5000万件の記録上の3条件が一致するかどうかをコンピューター上で照合する作業が基本(以下略)

「不明5千万件の年金記録調査に新ソフト、政府が導入方針」(yahoo news 読売)[キャッシュ]

だいぶ以前のことだが、私はある種のデータベース(数百万件程度のデータベース)を調査・整備する業務に従事したことがあったのだがその経験上「氏名・生年月日・性別」(以後「3要素」とする)を基礎とした照合作業の進捗に大きな疑念を抱いている。その大要は次の通り。

  • いまさら3要素での名寄せを行わなければならないほど杜撰極まりない年金データがなぜ今まで放置されてきたのか。
  • 数千万件というオーダーのデータを3要素だけで名寄せすることはおそらく不可能だろう。

第一の疑念についてはひとまずおいて第二の疑念について。
周知の通り3要素は人定項目の基本中の基本だ。これ人定項目としては極めて基礎的な項目である。そして基礎的であるが故に実際上、取り扱いに細心の注意を要する(要注意の)人定項目でもある。

単にコンピューター上で3要素を元に名寄せを行うプログラムなどは、気の利いた小中学生でも作れる程度の初歩的なものだと思われるので、かりにも政府の対策として新聞に載るほどご大層なものではないだろう。おそらく名寄せ作業上の大きな問題となってくるのは次のようなものだと思われる。

  1. 文書データを電子データに変換するのにかかる手間とその際に生じるミス
  2. (ミスのない完全な電子データを前提として)基礎的3要素では名寄せできないデータをどのように処理するか

かりに未名寄せデータの大半をこの三要素を元にして名寄せ出来るとしても問題は残る。数百万、数千万とデータの規模が大きくなればなるほどに当然のことながら僅かな人定項目で確実な名寄せを行うことは困難になってくる。データ量が万を超せば同姓同名どころか同姓同名同生年月日というのも稀ではあるがないわけではない(これは経験則。数学的にもわりと簡単に証明できそうな気がするのだが私には無理)。

まして女性であれば結婚で姓が変わる。名と生年月日が同一というのなら一気に数が増える上に、姓の変更履歴はコンピューター上のデータをどれほど精巧に扱っても(入力されていない限り)出てきようがない(しかも下の名だって手間は掛かるが変えられないわけではないし変わった人も現にいると思われる。結局、変えようがないのは生年月日と性別だけだがこれにも誤記などで記録上の齟齬が少なからずあると考えるべきだろう)。

と、挙げればキリがない。そのようにデータ処理だけでは名寄せできない場合にまさか(手書き原簿にあたる等)なにがしかの確認作業も抜きにして単に名前と生年月日だけで名寄せするわけにはいくまい(そもそも基礎となるデータなしにはコンピュータはなにもしてはくれない)。こちらの確認作業には途方もない手間(マンパワー)が必要になるはずだ。

結局、年金記録の名寄せ作業がコンピューター上で完結するものではないことは社保庁ほか当事者がいちばんよく承知されているだろうから、上記のような新聞記事は多分に世間に向けたアピールに過ぎないと受け取っておきべきだろう(ついでながらマスコミが政府のアピールを掲載するだけではあまりにも情けないと思った次第)。

時間が無くなった。3要素での名寄せすら行われないままに年金データがなぜ(どのように)今まで放置されてきたのかという点についてはまたいずれ。というかほんとならマスコミにそのあたりをキッチリ取材・記事化して欲しいところだ(今日まで私はそのような記事を見た覚えがない)。まさか某政権与党のように他人の所為にしてお茶を濁すことはあるまいね。
責任の押し付け合いや糾弾からは日本の未来が改善される希望など決して生まれてこない。責任問題とは別次元の精細な調査報道を期待したい。

広告

年金記録照合が1年でやれるのか? はコメントを受け付けていません。