求道blog

やじうま根性

Posted in 日本文学一般 by UBSGW on 2007年12月23日

このブログでは書籍の一部分を引用することがしばしばあるけれど、そのたびに思うことがある。
安易な引用を許さない文章こそ優れた文芸作品の条件の一つではないだろうか、と。これを別の言葉で言い換えるなら、粗筋を知ってしまえばもう読む気も失せてしまう作品ではないものとでも言おうか。まあフヤケタコトバカリ書き連ねてあってどこもかしこも箸にも棒にもかからないというのもあるかもしれぬが。

以前、どこかのブログのコメント欄でとある理論(?)に対する感想を述べたことがあった。wikipediaの記述をざっと見たばかりで感じたにすぎぬ愚見であったが。まあ決して褒められた態度ではない。もし自分がそれやられたら結構怒り心頭にというところだ。だからというわけでもないが(あるか?)、ちょいと一晩かけて仕込みをした。しかし結果的には無駄になったのだが。

島田Mが村上Hに尋常ならぬ感情を持っているらしいことがネット上のあちこちにあるようで、よそ事ながら結構興味津々なのだ。で、先日とある人気評論家(学者)さんのブログでまたそのようなものを読んだので、「へえ、やっぱほんとなの?」と思った次第。そこには村上のむの字もないんだが、こりゃあ「むの字はの字」しかいないだろ、とね、思ったわけだ。実際のところはまるで知らない。それはそれとしてなぜ島田が村上についてなぜにそこまで言わずにはおれないのかが知りたい。興味をそそられる。そこになにかありそう。野次馬です、ハイ。

それでま、ありもの島田を読んでみるかというわけで取り出したのが『忘れられた帝国』(「太陽の帝国」と間違ってしまいそうだ)。手許には他に『やけっぱちのアリス』しかない。後者は自腹を切ったものだが、前者はちょっとした経緯があって俺の本棚に収まっているもの。なもんで読むのは今回が初めて。いちおう以前何ページか眺めてみたが、それだけ。前の持ち主は大絶賛していたんだが。小説のつもりで読み進めていたらいつまで経ってもはなしが始まらないのに業を煮やした、とかそんな感じだった記憶がなきにしもあらず。

今回読んでみたところ、エッセイらしきものだということが判明。なるほど魚屋の店先で「鯖のみそ煮缶詰くれ」と言ってたわけだ、かつての俺は。話が通じなくて当然だ。で、この『忘れられた帝国』、結構笑える。引用はしない。そもそも笑い話は引用には向かないし、彼の作品そのものがどうも引用には向かないものだという気がしているので。なにせマンデリシタームの人ではあるしね。マンデリシタームについては、アフロディーテとかいう詩を島田が訳したものをこのブログのどこかにメモしている。)

ところで何故島田は自慰にこだわりを見せるのか。そこが私にはまだ分かっていない。村上が都合のいい性交を描く意図が分からないのもまた同様。モテル島田の描くモテナイ男と、モテソウニナイ村上の描くモテル男という「二重の対称性」にはなかなか興味深いものがある(これは私の主観ですよ、主観)。謎を解く鍵は意外とそのあたりにあるのであろうかどうであろうかあろうかあろうか。
ま、どうでもいいことではある。
そう、どうでもいいこと。
書いていればよし、カクしかない、でしょということで。

くおりあさんちでの戯れ言については、口をつぐむことにする。なぜなら言ってしまったその瞬間に自分に跳ね返ってきてしまうので(そしてそれは俺にとって48時間くらい逆立ちし続けることに等しいのだから)。鏡よかがみよカガミさん・・・あなたのおうちはどこですか。

ちなみにこの本の冒頭ちかく、下水に落ちた弟のエピソードがある。

弟は確信を持って地下水路に誰かいたといい張る。たぶん、光が苦手な照れ屋の河童が下水に住みついていたのだろう。その河童が弟をあの世へ流さず、この世へ押し戻したのだ。
帝国の下水には河童も住んでいる。
  島田雅彦『忘れられた帝国』新潮文庫

国家とは別の次元の、国家に対する反逆も破壊も伴わない「帝国」はいまもかろうじて存在している。いや、そうであって欲しい。そうでなければならない。念のため言っておくが、「帝国」を辞書でひくのはやめてくれよ。そこに政治的意図なんぞはまるでない。「帝国」の意味が知りたければ頼むからまずは島田を読んでね。読まなければ分からないものこそ文学です、たぶん。
辞書に載っていない言葉はたくさんある。というよりも辞書は所詮インデックス。頼むから振り回すのはやめてくれよ。厚いし痛い。

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コメント / トラックバック1件

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  1. 河童 said, on 2007年12月24日 at 2:15

    求道士様、どうも有り難う御座いました。


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