求道blog

現代の鬼平はいないのか

Posted in 社会 by UBSGW on 2008年11月28日

今朝の朝刊にて、佐賀県武雄市内で昨年起こった、暴力団組員による入院患者射殺事件の控訴審に関する記事を読む。

そもそも控訴理由は、検察被告ともに一審判決の量刑不服としている。そこでひとつ気になるのは、被害者との間に示談が成立していることが一審の量刑に反映されていることである。もちろん、示談の成立により刑が軽減されていること自体になんの不思議もない。しかし、本件については、被害者遺族の被害感情はすこぶる強く、そのことについてことある毎にマスコミも報道している。今朝の控訴審に関する記事でも被害者の未亡人が敢えて顔をさらして、犯人への強い処罰感情を吐露しておられた。その処罰感情の強さは、何も今に始まったことではなく、報道によれば遅くとも一審の段階から、そして実際には、事件発生当初からのものであると考えるのが妥当であろうと思う。チンピラ暴力団が「ひとちがいでした〜」「いまでも組関係者とおもってまーす」等々再三再四供述を変遷させて、「反省してます」と言う一方で量刑不服で控訴しているという状況のなか、被害者遺族の処罰感情はますます募っているのが現状だろう。

しかしなぜそもそも被害者遺族は示談に同意したのであろうか。その点について、私は一審段階から疑問に感じていた。なぜなら「強い処罰感情」と「示談の受け入れ」とは両立しがたいと思うからである。強い処罰感情を持った遺族が、何故量刑が軽減されること疑いのない示談に同意することになったのか。当時、すなわち一審段階でその報に接した際に私が立てた仮説は、示談を決める時点で、遺族は示談成立が量刑の軽減につながることを知らなかった、あるいは知らされていなかったというものであった。

そもそもごくごく普通に生活している市民にとって示談成立=量刑軽減となることは常識的知識とは言えない。この事件発生後、佐賀県警は捜査本部が置かれた武雄署内に被害遺族の世話をする係を置いたとの新聞報道を記憶している(参照すべき記事を探すが見つからないので後日追記したい)。なにせこの件は事件発生直後に警察庁幹部が捜査本部を訪れて事件解決を督励するほどの社会的影響甚大な事件であったから、そうした世話係の設置も私には当然と思えた。しかしそれならば何故その担当者さらに言えば佐賀県警は、遺族に対して示談の成立が量刑の軽減につながることを教示しなかったのか。ここに私の大きな疑問がある。またぞろ「民事不介入」とでも言うのか? 理屈としてそれが決して立たないものでもないが、もしそれが事実ならそれは背信行為と言うべきである(論証省略)。

事件発生以降、この事件に関する報道を見ていると、どういうものだか、佐賀県警の対応の不自然さが言わず語らず浮かび上がってくるように思えてならない。しかしその理由は分からない。いまのところ、それは佐賀県の風土というものであろうと考えていちおう納得している。

ラクダ色のセーターに濃い茶色のズボン姿で出廷した今田被告は、被告人質問で「重症の肝硬変で余命1年しかない」と自らの病状を説明。「(宮元さんの)家族には申し訳なく思っている」と反省の言葉も口にしたが、発言のほとんどは「供述調書の日付が書き換えられた」といった不満の繰り返しだった。 一方、黒いスーツ姿で意見陳述した篤紀さんは、裁判長から証言席に座るよう促されたが、「被告と同じいすに座りたくありません」と強い口調で拒絶した。意見陳述は、A4判の用紙6枚に及んだ。宮元さんの一周忌法要を営んだ10月中旬から準備を始め、寂しさに耐える2人の息子たちの思いも込めたという。篤紀さんは、1審・佐賀地裁が懲役24年の量刑判断の理由の一つとした道仁会との示談について、「判決に影響することを判決後に初めて聞いた。知っていれば示談はしなかった」と述べ、示談金には手を付けていないことを明かした。

「患者射殺控訴審初公判 夫失ったつらさ切々と意見陳述で涙の訴え」(2008年11月28日読売新聞)


(2008年11月28日追記)その後、示談に関して別の新聞に次のような記述を見つけた。

道仁会との示談については弁護士に一任していたことを明かし「お金を返せば刑が重くなるのなら、返してしまおうとも考えた」。

「凶悪事件防ぐ極刑を 入院患者射殺事件で遺族陳述」(佐賀新聞)[キャッシュ]

なるほど、この弁護士の氏名を是非知りたいものである。そもそも刑事事件に際して被害者が弁護士を立てることはそれほど一般的なことであろうか・・・。どのような経緯で受任したのか、なぜ示談に応じたのか。またひとつ疑問が増えた。ついでながら、佐賀新聞に関する個人的評価はこのブログの他のエントリを参照願う。


(2009年2月5日追記)
平成21年2月、福岡高裁にて無期懲役判決。
武雄射殺二審は無期 一審懲役24年破棄 遺族感情に配慮 福岡高裁判決(西日本新聞)


(2010年3月11日追記)
平成22年3月、最高裁が被告の上告棄却決定(3月8日付)。
佐賀の人違い射殺事件、元組員の無期確定へ(朝日新聞:2010年3月10日20時2分)

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