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『人民は弱し官吏は強し』再読

Posted in 星新一 by UBSGW on 2010年1月17日

星新一の『人民は弱し 官吏は強し』を再読。著者の父である星一が設立した星製薬が、(戦前戦後を通じて見られる)利権政治の渦中で商売敵やそれと結託する政治家・官僚によってどのように陥れられていったのかを描いた史伝のような小説、あるいは小説のような史伝。どこまでが事実でどこからが新一による想像・創作なのかは判然としない(部分もある)が、読む人が読めば「そこ」に描かれた醜い有様の多くがまぎれもない実際の様子であることはたやすく知れるだろう。

著者は史実にもとづきながら、アメリカ帰りの楽天家である父が如何に前向きに事業に取り組み、そして如何にドロドロとした利権や保身の為の嘘や嫉妬の渦のなかに引きずり込まれていったのかを描くにあたって(彼にしては珍しく)抑えきれない怒りの感情を垣間見せている。

裁判で理非を明らかにしようというのではなく、あくまで罪人を作りあげたがっているようだ。気ちがいが刃物を振りまわしているのに似ている。

『人民は弱し 官吏は強し』(新潮文庫)

拘置所あたりで読むには最適の一冊かも知れぬ。

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コメント / トラックバック2件

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  1. Mark Waterman said, on 2010年1月18日 at 15:55

    父親の星一には『官吏學』という膨大な著書があり、大昔にざっと現物に目を通したことがあるのですが、果たして内容がどうだったか、もはや覚えてはいません。

  2. UBSGW said, on 2010年1月18日 at 23:36

    大坪直行が角川文庫版『きまぐれ星のメモ』(言わずと知れた星新一のエッセイ集)の巻末解説のなかで星一の『官吏学』に触れていて、「毎日毎日の官庁相手の議論の予習復習が整理され、本になったものらしい」と書いているのを読んで目に留った書物です。
    探してみたところ近代デジタルライブラリーにも入っていました(wikipedia日本語版「星一」の項には直リンク有)。

    古今東西の官制・官吏についてかなり詳細にまとめているようですね(ちなみに目次と序文以外は未読です)。
    第四巻(最終巻)の巻頭序に「余と同縣の親友にして稀に見る篤学の士」「本書に關係深き渡部萬蔵君」への謝辞が見えていますが、ひょっとすると実際の調査執筆のかなりの部分を(文面からうかがわれる以上に大きな部分を)この渡部萬蔵という人物が担ったのではないかという気がしています(何故そう思うのかについては少し長くなるので略します)。


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