求道blog

ああ言えばジョーユウ、こう言えばヤクニン

Posted in 行政 by UBSGW on 2010年10月31日

法務省の取調べ可視化に関する中間報告が面白すぎると一つ前のエントリで書いたのでやむなくこのエントリを書くが、あまり気が乗らない。なぜなら、たしかに初めのうちはその「ツベコベさ加減」がアホらしすぎて面白がっていたんだが、それも読み進めていくうちに次第にウンザリしてきたからだ。早速脱線してしまうが、だいだい役人の非生産的な口ぶり仕事ぶり野放図さ加減にはまったくもって我慢がならん。

中間報告については下にいくらか書いておくが、そもそも取調べ可視化に関する捜査機関の反論を要するに、「そんなことしたら治安がどうなるかわかっておられますかねぃ、え?旦那。へへへ、どうなってもわたしゃ知りませんぜ、はぁっはっはっ。ま、それではお困りになるってぇのならあんまり無茶なこたぁ口にしねぇことですな。身の程を知るって言葉もありやすでげしょ、グヘヘヘへ」というふうに聞こえてくんだな、私の耳には。残念ながら。ま、皮肉をぶつけられてもまたまたツベコベ白々しく反論するか、鼻で笑っておしまいであろうがの。なんせ、どう転んでも役人は自分の懐を痛めるということがないのはあらかじめ明らかだからな。「官吏は強し」。

一方で、そうした(想定の範囲内の)役人側の抵抗を排して取調べの可視化を実現すべき側(政府与党) ((民主党は2009年の政策集INDEXで「取り調べの可視化、証拠開示徹底による冤罪防止」を挙げている。「警察、検察等での被疑者取り調べの全過程についてビデオ録画等による可視化を図り、公正で透明性の高い刑事司法への改革を行います。最近、富山氷見事件や志布志事件、足利事件などの冤罪事件が相次いで明らかになりましたが、最大の問題は密室での取り調べです。取り調べでの自白の強要による冤罪を防止するため、(1)裁判で自白の任意性について争いになった際に検証できるよう、取り調べの全過程を録音・録画することを捜査当局に義務付ける(2)刑事裁判での証拠開示の徹底を図るため、検察官手持ち証拠の一覧表の作成・開示を義務付ける——等を内容とする刑事訴訟法改正を実現します。」 )) はもはや「屁理屈の大海」で溺れ死ぬ寸前のようだ。願わくばそれが政策実現のための「戦術」であってほしいものだがそれもかなり疑わしい。

千葉景子法相 ((2010年参院選で落選。同年9月内閣改造で退任も、同年10月に「検察の在り方検討会議」座長に就任すると発表された。)) は18日の閣議後会見で、取り調べ可視化の対象事件を限定して法制化を進める方針を発表した。検察の取り扱う事件は年間約200万件に上り、交通違反、事故など供述の任意性が争いとならない事件が対象に含まれるほか、コスト面の負担が大きすぎると指摘。「実務上の課題を踏まえると、全事件の可視化は現実的ではない」と結論づけた。
 民主党は昨年衆院選で作成したマニフェスト(政権公約)で全事件・全過程の録音・録画の実施を明記。千葉法相も昨年の就任時には「基本的には全面可視化」と発言していた。だがその後、省内の勉強会で「可視化は真相解明に程遠くなる」などと捜査現場から反発を受け、現実的な路線に方針転換した。

「取り調べ可視化:対象事件『限定』、法相方針 民主党公約の『全面』、現実にらみ転換」(毎日新聞:2010年6月18日)

先頃法務大臣は交代したが、取調べ可視化に関する方針に変化はなさそうだ。あったとしても「さらに後退」なのではなかろうか(「転進」と称したいならお好きにどうぞ)。

下に、この6月18日に公表された取調べの可視化に関する省内勉強会の中間取りまとめのうち「被疑者取調べの録音・録画の在り方について」から役人のツベコベ振り(の一部)をざっと拾い出してみた。なお曖昧冗長意味不明瞭な役人言葉は一部独断で翻訳している。正確なところは法務省HPの「取調べの可視化に関する省内勉強会の中間取りまとめの公表について」でどうぞ。

過去の検討内容:

  • 全面可視化はそもそも無理だし手間暇かけるメリットが無い
  • 検察庁が1年間に受理する刑事事件数は約199万2千件と膨大、ほかに微罪処分に付される事件も相当数。うち道交法違反事件や自動車運転過失致死傷事件が7割以上。
  • これら全事件のうち公判請求された事件はたった約6パーセント。おまけに自白等の任意性が争われた事件は,裁判員制度の対象となる重大事件(年間2千数百件程度)においても全体の3パーセント程度。
  • つまり、およそ任意性が問題とならないと考えられる事件が相当数あるにもかかわらず相当な負担・コストをかけて全面可視化を実施しても,メリットに見合わない。

録画録音を拒否する被疑者も存在する:

  • 一部録音録画を実施している現段階でもそれを拒否する被疑者がいるから全面可視化導入後しても拒否する被疑者は相当数いるはず。
  • 被疑者本人が拒否しないとしてもたとえば通訳が拒否することもあり得る。
  • 機材の不具合で録音不能なケースも生じる。そのような、そもそも実施が困難な場合についても録音・録画の実施を義務付けるとすれば,捜査機関に不可能を強いることとなる。
  • 長時間の取調べをすべて録音・録画することとした場合,警察における捜査主任官や主任検察官,弁護人は,そのすべてを視聴しなければならないこととなる。
  • 録音・録画及び再生のための器材の購入・配備費用,庁舎の改修費用,検察官・検察事務官・警察官の増員のための人件費など,相当な費用を要する

つべこべつべこべ。
取調べ可視化については、法務省(=検察)とは別個に国家公安委員会(=警察)でも検討 ((国家公安委員長が人選・委嘱した警察OBや元検事、弁護士のほか心理学などの専門家ら12人で構成される有識者研究会。各国の捜査手法を研究するほか、取り調べの全面可視化を中心に討議を重ねてその結論を同委員長に提出することとされる)) がなされているが、それについてはいったい何ゆえにそれらを別々に検討するのか私の知るところでない。ただ、少なくともそうしておけば手間がひとつ増えるから、時間を稼ぎたい(政治家と違って時間をかけて得することはあっても損することはまず無い)役人側には都合がよいということはあるだろうか。つまり検察が検討、警察も検討、今度は検察と警察合同で検討、やれ委員会、それ審議会、・・・、とね。あほくさ。で、そうやってアレコレツベコベ時間を稼いでいるうちに挙げ句政権交代にでもなれば、と。実際、民主党政権誕生直後であれば希望のもてた各種政策実現も、政権発足後短時日のうちにあやふやとなり、もはや7月参院選での民主党大敗のおかげで泡と消えた。挙げ句に政策実行能力を喪失しつつある政府与党にとって「補正予算の成立」程度のことが今国会の最重要課題だと首相が所信表明するくらいであるから、もはやどうにも手の打ちようがないのかもしれぬ。

審議だとか熟議だとか話し合いだとか言っても、所詮日本人集団のやることといえばつまるところ足の引っ張り合いであるが、しかし、だいたい政策実現の難易度というかハードルの高さはというと、ことオカネの支出については(相対的に)低い。何となれば、誰も彼もが「クニの金=他人のカネ」と思っているから、クニのカネの支出については既に暗黙の合意形成がなされているようなものであって、形式上、たとえば当の政策実現とは無関係であるはずのその時々の問題・不祥事たとえば「政治と金モンダイ」とか「何某議員の証人喚問」とか「○○君が下校時に買い食いしてましたー」とかいうような末梢的副次的な問題を「熟議」して「アリバイ」を作るいっぽう各政党の折り合いがようようつきさえすれば、あとは水が低きに流れるように「××補助金」「△△経済対策」は実現してシャンシャンとなる。つまるところ談合と大差ない(そしてその結果が国民一人あたり数百万円だかの借金というわけである)。

取調べの可視化でもなく、また複雑怪奇な官公庁の整理でもなく、公務員制度改革でもない、雇用流動化でもない、たかだかカネの出し入れ程度のことが今の国際情勢・経済情勢下で「最重要課題」となっているのが哀れ日本の現状というわけだ。言ってみれば、既に敗戦必至の状況でありながらなぜか来年度の軍事予算の増額を巡って与野党が駆け引きしているようなもんだが、「歴史上たびたびそうしたことを繰り返してきた日本においてはさほど驚くべきことでもない」ことは驚くべきことかもしれぬ。

最後に
そもそもオリンピックは参加することに意義がある(らしい)
ブログは書くことそのものに意義がある(ということにする)
ふん。

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コメント / トラックバック1件

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  1. Waterman said, on 2010年11月1日 at 14:22

    >ブログは書くことそのものに意義がある(ということにする)
    ふん。<

    いや、それはそうでしょうが、読む者がいて・・・。


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