求道blog

日本版NSCと小役人のヤクニン根性に関するメモ

Posted in 行政 by UBSGW on 2011年1月17日

2010年参院選で敗北したあと閣僚役員入れ替えて「本格」内閣を仕立てて「仮免許」で運転していたことを「告白」したと思いきや、さらに内閣改造で第二次内閣なのだとか。現内閣はいずれ「日本史上に名を残した内閣・首相」となるのは既定路線であるようだけれども、その点について現首相はまだまだ不安が残ってでもいるのか、この度の内閣改造では史上最年少かつ線の細い官房長官兼沖縄担当相を登場させた。どうもそのあたりの人選からして、もしや難問をグダグダにしてだめ押しの自殺点 ((いまは「オウンゴール」と言うことが多いらしい。)) を狙う気なのかな、という気がしないでもないが、「奇兵隊」なだけに奇策を隠しているのであろう、か。
いずれにせよ、山も登るときには目指すところがはっきりしているせいでそうそう予測から外れることはしないもんだが、これが下山となるとどこをどうほっつきはじめるかはまるで予測のしようがない(ましてや役人という野獣とも地縛霊ともつかぬ者共に「こっちのみーずは甘ーまいぞ」「あっちのみーずは苦ーいぞ」と誘惑恫喝されるのではなおさらである)。
いずれにせよ言うても詮無いことではある。

このブログではいままで役人について何度も取り上げて書いているが、これについても(一般論としては)確かに詮無いことであるには違いない。栄光の巨人軍が不滅 ((私は「アンチ巨人」というわけではないがあれになんの興味もないし、つぶれるならさっさとどうぞくらいにしか思わない )) であるのと同じ程度には、役人もまた永遠に不滅である。私としても馬鹿は見ない(見えない)ことにするべく適当な区切りを探してはいるのであるが、なかなかその機会はやってこない。もののついでに言うておくが、このブログで「役人」「ヤクニン」と書くときには必ずしも「公務員一般」を指しているわけではない。いちおう「ある種の公務員」という限定をするべく「役人(ヤクニン)」と書いている、というか自然そのようになる。以下のメモは大猿小猿ならぬ大役人小役人に関するメモである。
なお強調(太字)は引用者によるものであり、筆者に、過去半年 ((「尖閣ビデオ流出」も「警視庁外事情報の持ち出し」も「ウィキリークス騒動」も、いずれもこの報告書が提出された後に立て続けに取り沙汰された出来事であった。 )) の様々な出来事を考え合わせて「あんたたち、ようそんなこと言えまんなぁ」「ほ、皮肉だぁな」という反応を生ぜしめた箇所であり、共感や同意を示すものでは一切ない。
ほんとうは自分の文章として書こうとしたのであるが、ここまで書くのにだいぶん時間がかかってしまったので止した(と言い訳)。

第4章第1節 内閣の安全保障・危機管理体制の基盤整備
1 内閣の安全保障機構の強化
安全保障に関わる判断は総理大臣を中心とした内閣でなされる。内閣において安全保障会議や内閣官房といった安全保障・危機管理を担当する機構(内閣の安全保障機構)は、これまで累次の制度改革を経ている。
まず日本の現行制度では、国会が文民である内閣総理大臣を指名し、内閣総理大臣が内閣を代表して自衛隊の最高指揮監督権を有するとともに、防衛省・自衛隊すべてを適切に指揮監督する防衛大臣を任命するなど、国会、内閣、防衛大臣と様々なレベルでシビリアン・コントロールが制度的に担保されている。
ここで重要なことは、文民指揮監督者が十分な情報と知識をもって指揮監督権を行使できる体制を整備することである。現状では、内閣レベルの会議体である安全保障会議が設置されており、安全保障上の重要問題について、内閣総理大臣を長として関係閣僚が情報を共有し議論をする場として機能している。特に、自衛隊の任務が多様化するにつれ、防衛力整備の問題に加え、自衛隊の活動や各種事態への政府の対処に関する重要事項を審議・決定する頻度が増え、その役割は増大している。また、近年、安全保障問題について緊密に協議するため、少数の関係閣僚による会合が随時開かれ、安全保障会議の機能を補完するようになっている。
次に、危機管理・安全保障政策の司令塔である内閣総理大臣を補佐する組織である内閣官房は、その役割を強化し、有効性を増してきた。内閣危機管理監を中心とする現在の危機管理体制は、これまでの実績を見ても、自然災害、重大事件および事故等の危機に対して有効に機能していると評価できる。また、武力攻撃事態や周辺事態等への対応に関しては、官房長官を委員長とする事態対処専門委員会が置かれ、安全保障会議を補佐する態勢となっている。
こうした基盤に立って、今後取り組むべき課題の一つは、自然災害等の危機への対応とともに、武力攻撃事態のような国家的な緊急事態が発生した際にも、内閣の安全保障機構が十全に機能を発揮するための準備と検証であろう。そのためには、武力攻撃事態や周辺事態、あるいは大規模サイバー攻撃といった事態を想定し、平素から、政府全体としての総合的な演習を定期的に実施することにより、現行態勢の問題点を洗い出すとともに、平時から有事への国としてのシームレスな対応が確保できるよう、所要の改善措置を講じていくべきである。また、こうした演習には、内閣総理大臣と関係閣僚の参加も必要である。どのような制度にしても、それを指導者が使いこなす意思と能力を持つことが最も重要だからである。
もう一つの課題は、内閣の安全保障機構における国家安全保障戦略の策定である。日本の内閣の安全保障機構と米国等の国家安全保障会議(NSC)とを単純に比較することは適切ではないが、両者の大きな違いは、日本の内閣の安全保障機構が、高次元での国家安全保障戦略そのものを策定する態勢になっていないことである。その態勢整備のためには、法改正による機構改革が必要となるケースもあるが、新たな機構にNSCという名称を冠するかどうかは本質的な本質的な問題ではなく、実効性のある制度を整備することが重要である。ただし、米国をはじめとして多くの国がNSCを有していることに鑑み、日本における彼らのカウンターパートがどの部署の誰であるか、いわば「誰に電話をかければよいか」が時に不明になってしまうという通弊は早急に改善されるべきである。内閣の安全保障機構を強化し、そのトップを職務に専念できる一元化した安全保障・危機管理の責任者として対外的にも明確化することが求められる。

2 情報機能の強化
安全保障に関わる政策判断を支える重要な基盤は情報(インテリジェンス)である。内閣における情報機構もまた、累次の制度改革を経て、強化されているが、課題は残っている。まず縦割りの弊害を克服し、政府全体の情報を一元的に集約した上で分析するオール・ソース・アナリシスを強化する必要がある。次に内閣レベルでインテリジェンス・サイクルが効果的に稼働するよう強化することである。情報は、戦略的なニーズに基づき、政策サイド(カスタマー)から発注され、それに応えた情報をカスタマーが受け取り、評価をし、それに基づく政策を行うという形で初めてサイクルが回り始める。つまり、政策サイドの情報関心が示されなければ、情報サイドがたとえどれほど優秀でも独り相撲をとらざるを得ない。政策サイドと情報サイドの間で情報関心について意見交換を行うことにより、インテリジェンス・サイクルを機能させなければならない。
その場合、内閣における情報のカスタマーは、内閣総理大臣をはじめとする官邸の幹部のみに限定されない。上述のように、内閣の安全保障機構が安全保障戦略を策定する役割を果たすことで、同機構が情報のカスタマーとして効果的に機能できる。政策サイドと情報サイドが平素から互いを鍛え合う取り組みを地道に継続することこそ、日本の安全保障・危機管理体制の発展につながる。政策サイドと情報サイドの改革は、まさに車の両輪である。ただし、「情報の政治化」を防ぐため、政策サイドと情報サイドの分離についても注意を払わなければならない。
また、これまで実施されてきた様々なタイプの情報収集に加え、日本が今後、特に力を入れるべき領域として、宇宙やサイバー空間の状況監視、対外人的情報収集(ヒューミント)などが指摘される。日本としては、これらの情報収集・分析能力の強化に取り組むとともに、中長期的に安全保障を目的とした衛星システムの整備に努める必要がある。また、デュアル・ユース技術を利活用して、陸域・海域観測衛星、海洋探査、地理空間情報システムを整備し、日本とその周辺における海洋監視能力を向上させる必要がある。これら日本が独自に収集した情報を適切に保護するためにも省庁間における秘区分および取扱手続の共通化など、政府横断的な取り組みとして情報保全の強化を一層進めるべきである。なお、情報保全の強化とともに適切な文書管理にも配慮する必要がある。
また、今日の世界で、日本だけで安全保障上の課題に取り組むことは不可能である。インテリジェンスの分野で日本のパートナーを増やし、他国との情報協力を進めるためにも、情報保全機能を強化して日本に対する信頼を増進しなければならない。こうした情報保全の強化の取り組みに法的基盤を与えるため、秘密保護法制が必要である

新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会報告書「新たな時代における日本の安全保障と防衛力の将来構想」(2010年8月)

佐賀県警が、2009年2月から約1年半、見掛け上の事故件数を減らす目的で、軽微な人身事故計1033件を統計に上げず、過少に計上していたことが13日、分かった。当時の交通部長ら県警交通部が決定し、各警察署にも報告に上げないよう部長名で口頭や文書で指示しており、組織ぐるみで改ざんしていた。
 同日付で、当時交通企画課長だった松尾正博交通部長ら幹部5人を内規に基づき本部長注意や指導などとした。当時の本部長は警察庁長官注意とした。
 県警によると、統計から省いていたのは、09年2月14日から昨年6月8日までの間。駐車場や私有地など道路以外で起きた人身事故と、発生当初は物損事故として扱っていたが、その後に当事者からけがの申し出があり人身事故になった軽微なケースを外していた。
 09年は、人身事故の発生件数を8548件とするところを786件少ない7762件と過少計上。この措置で、発生件数は対前年比では192件(2・2%減)しか減っていなかったのに、978件(11・2%減)も減っていたように改ざんしていた。
■課題「事故の抑制」の成果挙がらず…
 県警監察課などによると、県警は09年の重点課題の一つに「人身事故の抑制」を掲げた。しかし1月に事故が多発し成果が挙がらなかったため、2月上旬に当時の交通部長ら交通部の幹部が抑制策を検討。軽微な人身事故は統計から外すように決めた。本部長には報告しなかったという。
 その後も、この統計方法を継続していたが、昨年3月以降に交通部内で再検討し、「運用を誤っていた」として6月8日に本部長に報告。翌9日に正しい運用に戻すよう各署に伝達した。
 同課によると、公表が半年後になったのは、「期間中の人身事故を精査したり、関係者への聞きとりなど内部調査に時間がかかったため」としている。統計から外していた人身事故の捜査と行政処分ははすべて適正に行われたという。
 鈴木三男県警本部長は「交通統計に対する信頼を損なったことは遺憾であり、誠に申し訳ない。再発防止に万全を期したい」とのコメントを出した。
■警察庁が事故件数を訂正 
 警察庁は13日、2009年1年間の全国の交通事故統計を訂正した。佐賀県警の過少計上に伴う措置で、事故件数は786件増の73万7474件、負傷者数は993人増の91万1108人。
■改ざん方針、前年の死亡事故増加率ワーストが影響か
 改ざんが始まった2009年の前年は、佐賀県内の死亡事故増加率が全国ワーストになった年。汚名返上に本部長以下、交通部幹部は躍起になっていた。「本部長がとにかく人身事故件数を減らすよう厳命した。交通部長を含め、幹部は変な形で対応してしまった」と語る県警関係者もおり、縦社会がより強い警察組織の中で、トップの指示に応える苦肉の策として改ざん方針が決まったとの見方もある。
 ある警察官は「2009年の重点項目として『人身事故の総量抑止』が掲げられた。当時の本部長は、部長など最高幹部を毎日のように呼び出し、厳しい言葉を浴びせていた」という。
 県内の2008年の交通事故件数は、死者数が前年比36%増の68人で、増加率は全国ワーストだった。人身事故件数は8740件で前年から166件減っていたが、死者数の急増は不名誉な数字で、事故抑止が09年の命題だった。
 改ざん方針は各警察署にも伝えられ、現場からは不信や疑問、不満の声も上がったという。警察官は「トップからの圧力があったとはいえ、交通部がプライドを捨てて最悪の手段を講じてしまったのは情けなく、悔しい」と語る。
 なぜ、交通統計の改ざんに手を染めてしまったのか。別の警察官は「死亡事故件数の改ざんはとてもできないが、発生時は物損事故として処理しながら時間がたって身体の異常を訴えてくるケースは結構ある。そうした事故の処理だから(改ざんを)やりやすい面があったのではないか」と話した。
2011年01月14日更新

「佐賀県警、人身事故件数改ざん 1033件過少計上」(佐賀新聞:2011年1月14日)

(2011年1月18日一部改稿)

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李下に冠を正さず、君子危うきに近寄らずとはいうものの

Posted in 行政 by UBSGW on 2010年12月16日

古諺をもじって、「デカのオツムを正さず」あるいは「君子キチガイに近寄らず」とするべきだろうが、また「催促」されてたしメモだけしておくとする。

郵便不正事件での証拠改竄で味噌をつけた大阪地検だが、また無能無力を曝したようだ。
歴史好きの一人としてためしに現在と過去を比較対照してみれば、私の目には旧陸軍=警察、旧海軍=検察というカンジに見えている。夜郎自大かつ傍若無人でヒト・モノ・カネが比較的に豊富な陸軍に対し、軍人とはいえわりと理知的・紳士的ながらも数と”実行力”に圧倒されて「陸」に対抗し得なかった海軍。そういうところが現在の警察と検察との勢力関係と似ていると言って言えなくはない。そして下々から観れば「どっちもどっち」「五十歩百歩」「目糞鼻糞」というところも戦前の様子とよく似ているのではなからうか。無いと困るが扱い方に非常な注意を要するという点では軍隊も治安機関も刃物と同じだ。たとえそれが”ナマクラ”であったとしても、だ。
ま、下のような暴言恫喝は序の口序二段幕下チンピラになり損ねた木っ端役人のやることだが。

取り調べの際に相手を脅す暴言があったとして、大阪地検特捜部が、大阪府警東署刑事課の警部補(34)を脅迫罪で立件する方針を固めたことが13日、検察関係者らへの取材でわかった。
取り調べ時の捜査員の暴言が立件されるのは極めて異例。大阪府内在住の会社員の男性(35)が今年10月、警部補と同僚の巡査部長(32)を特別公務員暴行陵虐などの容疑で特捜部に告訴していた。
男性の弁護士らによると、遺失物横領容疑を持たれた男性は9月3日、警部補らから東署へ任意同行を求められた。男性は持ち込んだICレコーダーで、取り調べ中のやり取りを約3時間半にわたって録音。録音内容によると、警部補らは、「殴るぞお前」「お前の人生むちゃくちゃにしたる」などと発言した。

「取り調べ暴言警部補、脅迫罪で立件へ…大阪地検」(読売新聞:2010年12月14日付)

大阪府警東署の警部補(34)らが任意の取り調べ中に男性会社員に暴言を吐き自白を強要したとされた問題で、府警は16日、「取り調べで必要以上に厳しい言葉で追及した」などとして、警部補を減給10分の1(1カ月)、巡査部長(32)を戒告の懲戒処分とした。
また、監督責任として東署長(59)を本部長注意とし、適切な捜査指揮を怠ったとして同署刑事課長(58)ら2人を所属長訓戒などとした。
府警によると、警部補らは9月3日、拾った財布を横領した遺失物横領事件の容疑者として、男性を休憩含む計約7時間にわたり任意聴取。その際に「手出さへんと思とったら、大間違いや」などと、大声で怒鳴るなどしたとされる。
男性は10月、特別公務員暴行陵虐罪などで大阪地検特捜部に告訴。特捜部は脅迫罪を適用し、警部補を在宅で立件する方針を固め、捜査している。
一方、留置中だった女性と留置施設内で肉体関係を持ったとして、枚方署の元警部補が特別公務員暴行陵虐罪で起訴された事件で、府警は16日、監督責任などを問い当時の枚方署長(55)ら6人を本部長訓戒などの処分にした。

「暴言問題で大阪府警東署の警部補らを処分」(産経新聞:2010年12月16日付)

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「日本の不思議な役人」と情報流出

Posted in 行政 by UBSGW on 2010年11月12日

警察庁・警視庁・海上保安庁を舞台とした機密漏洩・ビデオ流出事件について、マスコミでもネット上でも冬の日本海の荒波のごとき記事の大波が立て続けに生じている。「機密」「秘密」にはあたらないから逮捕できない云々言われているようで、役人の「サボタージュ」はもはや手の施しようがないところまできているように見える。いっそ国会とか内閣とか無くしてしまってももはや二ホンの国家運営には何の支障もないないのではなかろうか ((もちろんこれは皮肉だが、わざわざ「皮肉です」と断りを入れておきたくなるのだから、気の利いた皮肉ではないな )) 。 しかし実のところは、自分の住処をぶちこわしつつ快哉を叫ぶフシギな人たちでしかないと思う ((週明けの2010年11月15日、海上保安庁ビデオ流出事件に関して同日検察・警察は出頭した海上保安官の逮捕を見送り任意捜査とすることを決定した旨報道された。)) 。
なお、最近生じた一連の出来事については報道がいまだ現在進行中であるので、ナマケモノ の私 ((というか私はただの歴史好きであって事実が不明確な現在進行形の出来事(報道)にはあまり興味がないんだな、と自己弁護しておく)) にはいちいちフォローすることができない(またする気もない)。よって今年3月にイギリスでの機密漏洩(未遂)事件に絡めて日本の役所の保秘体制に疑問を呈したエントリから一部抜粋して、大海にさらに一滴を投下しておくことにする。誰かな? 「二階から目薬、だろ」なんて言ってるのは。


(以下抜粋)
つい先日、BBCのニュースサイトを見ていたら、イギリスの諜報担当官庁であるMI6の元職員が職務上知り得た情報を外部に漏洩したかどで逮捕・起訴された、という記事が目に留った。ちょうど昨年の年末にサマセット・モームを何冊か再読して、そのなかにはスパイを主人公とした『アシェンデン』もあったので、へぇと思いながらこのニュースも興味深く読んだ次第である(ちなみに文豪モーム自身、作家と”スパイ”の二足草鞋を履いていたことで知られていて、この作品は彼の経験に題材をとったフィクションとされる)。
BBCの記事は下記リンク。

2007年からMI6に勤務していたH氏は2009年5月に退職したのち、2010年3月1日の午後、ロンドン市内のホテルにて不法に機密を開示して(ある新聞によれば金銭目当てであったとのこと)即日逮捕された。起訴状の要点は次の二点である。

  • 2007年9月1日から2009年5月31日(在職期間)の間に為した窃盗(職務に関連のある電子ファイルを窃取した)罪
  • 2010年3月1日に、正当な権限無く機密情報を開示した(職員であった当時より占有していた電子ファイルを開示した)罪

犯行に着手したその日に逮捕、二日後には窃盗の事実も併せて起訴ということであるから、イギリス当局の対応はきわめて迅速である。その手際の鮮やかさからすると、おそらく当局はH氏の退職後(あるいは既に在職中から)彼をマークしていたのであろう。あるいは彼がホテルで接触した人物は当局がアレンジした、いわゆる駄目押しの”囮”であったのかもしれない(そう、『アシェンデン』読者の想像はどんどん膨らむんだよ)。もしそうであったなら、イギリス当局は機密漏洩を水際で防ぐことに成功したということになる。

(補記)この件に関するその他の参照記事

もし、同様の機密漏洩(あるいはその試み)というケースが日本で生じた場合、このイギリスのケースのように迅速且つ合理的な対応は期待できないのではないかという気がする。私は日本にMI6のような諜報機関があるのかどうか寡聞にして知らないのだが、たとえば自衞隊や警察の関係者が機密情報を漏洩せんとした際にかくも迅速かつ適切に摘発されたことがあるのだろうか。なおここで私の言う「適切」とは、機密の漏洩を「未然に防ぐ」という意味である。

たしかに日本でも公務員にはそれなりの守秘義務が課されていることは承知しているが、それはどちらかといえば公務員たるものの一般的義務としての守秘義務であって、事実上の「努力目標」にすぎないと言うべきなのではないかという気がする。そうした「一般的義務としての守秘義務」を課されている万を超える公務員のうち、ごく少数にせよ明確な犯意をもって機密(職務上知り得た秘密)を不法に開示しようとした場合にそれを阻止する手立てはあるのだろうか。私が過去に見聞した新聞その他の記事に徴する限り、日本では既遂の機密漏洩を事後に摘発することはあり得ても、上のイギリスでの事例のように未然に機密漏洩を防止しなおかつ公然とそれを訴追するということは、ひょっとすると行われていないのではないかという疑いを拭い去ることができない。

とはいえ仮にそうであるからといって私自身の日常生活には何の支障もないわけで、余計なお世話だよなという気もするのであるが、それこそ十代の頃からたとえそれが知らなくても良いことだろうとなかろうと、(まさしく活字中毒者として)片端から情報を摂取してきた私としては、日本の防諜体制についてもとりあえず「どうなってんの?」と聞いてみたいわけだ。それというのもしばしば新聞などでそれらしき記事を読みながら疑問を感じることがしばしばあって、それらのスクラップも当然私の手許にある。どうやらようやく私の「死蔵スクラップ」の出番が到来したようなのでそのなかから二つほど見てみたい。

福島県警は18日、同県郡山市の暴力団員から現金200万円を借りるなどしたとして、組織犯罪対策課の警部補(44)を停職6カ月の懲戒処分にした。警部補は同日付で依願退職した。監督責任を問われた当時の組織犯罪対策課長の警視(57)ら7人を本部長注意などの処分にした。
 県警監察課によると、警部補は郡山署に勤務していた2008年3月、暴力団員からワイシャツの仕立券5万円分をもらい、組織犯罪対策課に異動した今年2月には同じ暴力団員から現金を借りた。便宜を図るなど見返りは行っていないという。
 監察課によると、6月に郡山署に「貸した200万円をまだ返してもらっていない」と電話があり発覚。警部補は別の借金の返済に充てていた。現金は既に返済した。

「警部補が暴力団員から借金 / 200万円、福島県警が処分」(佐賀新聞) :2009年12月18日

  1. 組織犯罪対策課の警部補が、
    (→組織犯罪対策課は暴力団対策の主務課)
  2. 暴力団員から200万円を超える金品を受け取り
    (→暴力団は取締まりのターゲット)
  3. 便宜を図るなど見返りは行っていないという
    (→真偽の確認はしていませんということ)
  4. 依願退職した
    (→本人都合退職=軍隊風に言えば”名誉除隊”)

ためしにこれをイギリス情報機関になぞらえると次のようになるであろうか。

  • 国内治安を担当するMI5の班長が
  • テロリスト予備軍から金品を受け取り
  • 情報漏洩を察知されることもなく
  • 依願退職した
  • (めでたしめでたし)

もし仮に当人の言うとおり便宜供与がなかったのだとしても彼に同情する人は皆無ではなかろうか。

警部補クラスで200万円ならもっと上位の階級になればすごいことになりそうであるが、実際にそれを想像させずには置かない事例が時をおかずしてひっそりと報道された。

佐賀県警で組織犯罪対策課長を務める警視(54)が、多額の借金を抱えた末に自殺未遂を起こしていたことが分かった。
県警は25日、減給1か月(10分の1)の懲戒処分にし、警視は同日付で依願退職した。
 県警監察課によると、警視は10月30日未明、佐賀市内の自宅前に止めた自家用車内で練炭自殺を図り、一酸化炭素中毒に陥った。一命を取りとめたが、今月20日に辞職願を提出した。県警は25日の処分後に辞職を承認した。
 課長は数年前から消費者金融などに数千万円の借金があり、返済に窮していたという。監察課は「多額の借金や女性との不適切な交際など、公務員としてふさわしくない行為があった」と処分理由を説明している。

「警視が借金苦で自殺未遂、減給処分受け退職」(讀賣新聞:2009年12月26日)

  1. 組織犯罪対策課のトップが
    (→ —同上— )
  2. 不適切な女性関係と
    (→詳細の言及なし)
  3. 短期間で嵩んだ数千万円の借金とで
    (→出所の詳細・使途は公表されず )
  4. 自殺未遂を図ったが果たせず
    (→辞表提出の2ヶ月も前のこと)
  5. 12月20日ついに辞表を出して
    (→仕事納めというキリの良いタイミングで)
  6. 依願退職した
    (→ —同上— )

なおこのニュースについては(少なくともウェブ上では)朝日・読売以外の記事を見出せず、さらには朝日が読売よりも半日早く報道し且つ記事末尾に「この件について、県警は課長の辞職の事実のみを人事異動で発表していた。 」と記してあることから、朝日新聞のスクープであったのかもしれない。こちらの記事→「佐賀県警警視、借金苦で自殺未遂 減給処分受け依願退職」(2009年12月26日付)。なお読売の記事はこのエントリを書いている時点で既に閲覧できなくなっている。

以上が佐賀県警の事例である。こちらは女性関係だとか借金だとかが背景になっている(らしい)為、一見しただけでは同情の余地がありそうにも見えるが、しかし「組織犯罪対策課」という一種の対テロ部門の、しかもトップであるという事実は看過しがたいように思われる。暴力団は、組織的犯罪集団でありかつ暴力を背景として犯罪を実行するという意味ではまさしくテロ集団というべきだろう。そしてそのような組織的犯罪集団の取締まりを担当する部署では他の部署以上に厳格な情報管理体制が要求されるはずであるが、そのトップがカネとオンナという「弱み」を抱えて(あるいはそれと知らずに”持たされた”のかもしれぬが)しまえば、こういった組織(部門)としては致命的状況と言っても過言ではない。こういう組織からは情報がまさしく「ダダ漏れ」するのは火を見るより明らかであるから、まともな人はそういう組織は相手にしないかせめて(優しく)敬して遠ざける、ということになるのかもしれない。

このあともクドクドと論評を書き付けてみたが「豆腐の上にスックと立つ」ような真似はよすことに決めて削除した。せめて「歪み」だけは取り除くべきだろう、とだけは言っておく。とはいえ田舎県警には逆立ちしても無理なことなのかもしれないので、あとは矯正できる者が居るものと信じるほかはなさそうだ。

それはそれとして、公安職公務員には行政職より遙かに厳格な守秘義務を課すべきかもしれぬ。イギリスの事例と比較すると国家公務員法・地方公務員法で定められた守秘義務なぞ無きにひとしい。それよりもなによりも情報はいったん漏れたら取り戻すことが出来ない(事後的な対策が意味をなさない場合がある)ことに鑑みれば、日本の関係機関はまず内部の防諜体制を強化再構築すべきなのかもしれないが、外に厳しく内に優しいのは(個人情報保護法などはその典型例と言える)日本古来の麗しき伝統であるので、あとは殘念ながら新たな「敗戦」に期待するしかない、ということか。

(以上抜粋)

「日本の不思議な役人」と情報流出 はコメントを受け付けていません。